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2011年10月23日 (日)

新井素子「銀婚式物語」購入と、銀婚式物語とは全然関係無い雑談

 中央公論新社から刊行された、新井素子の新刊購入。以前、角川文庫から出た「結婚物語」「新婚物語」の続き。
 都内大手書店に並び出したのは21日夕方だったらしいが、どうやら私、しっかり、その21日にすぐにゲットできてた模様。病気で入院してるというのに・・・・出たばかりの新刊を買ってきてくれたダンナに感謝感謝だ。

 このシリーズ、新婚物語まで出てた頃は、作者も含めて、妊娠、出産、子育てのバタバタ大騒動の物語も続けて出ていくんだろうなと、予測・期待されていたような気がする。作者自身があたりまえのように、何年かしたら出産といったようなことにだって楽しげに触れてたわけだし。新婚物語で購入したマンションには、そのうちこどもがうまれた時用のスペースだって準備されてたわけだし。
 でも結局、そうした物語は描かれることなく、陽子さんと正彦くんの物語は25年後にとんだ。

 私はそれなりに新井素子ファンではあるので、その間に出たほのぼのエッセイも、お笑いエッセイも、シリアス系ホラーも、SFも、単行本になった物は大体全部おっかけてきたとは思う。

 「結婚物語」の頃から作者は、この物語は、ノンフィクションをもとにしたフィクションなんだと主張している。適宜ノンフィクション部分を混ぜているのだと。
 確かに、「結婚物語」はフィクション部分の占める割合が高いだろうなあという印象を受ける。でも、「新婚物語」は、ノンフィクションが小説向けに書き換えられたのだろうなとおぼしき叙述が増えている印象だ。病院行騒動、引っ越し、猫ちゃんのファージの家族入りなど。

 そして「銀婚式物語」。
 「新婚物語」までの重要キャラ達が、年月が過ぎ去ったのと共に退場していっただけではなく、物語叙述が、陽子さんの頭で思うことが中心となり、正彦さんですら、陽子さんに比べるとその思いの部分がやや後ろに置かれる形で描かれている。
 だからこの本の印象は、物語というよりは、≪ノンフィクションをかなり参考にした、エッセイ的叙述≫といったものが強くなっているような。

 全13章にOPENINGとENDINGがつく。
 マンションから一軒家へのお引越しという大騒動があったため、物語の中でそれらの占める割合が最も高い。
 エッセイ本「明日も元気にいきましょう」(角川文庫)にあった、一階部分が書庫で二階部分が住居、お父さんから受け継いだ膨大なSF本をようやく自宅に引き取ってエクセルで管理、といった顛末が、詳しく詳しく、それはもう詳しく描かれる。エッセイでは短かったため、おうち作りの顛末の記述はものすごく面白い。
 幸せそうだ。いいなあ・・・・と思う、マンション住まいで本をなかなか増やせない私(笑)

 それから、猫絡みの騒動。
 アテロームによる騒動はぶっちゃけ「もとちゃんの痛い話」(角川文庫)の方が面白く読めるものになっているとは思う。

 アテロームによる通院話にくっつけて、短めにさらりと、不妊のお話。そして、25年という歳月の中で去っていってしまった人々のお話。
 新井素子さん、あとがきで
「ぜひ、二十五年後、『金婚式物語』でお目にかかりたいと思っています」なんて言ってるけれど、ホント?それホント?二十五年もたったら、普通、もっと増えるよ?
 まあどのみち、私は読めないんだけど(涙)

 といったあたり、総体的感想。
 ここで感想文終わらせちゃっていいんだけど、読みながらついついメモとってしまったので、その細かいメモも書き散らしてしまいます・・・・。


1)長生き!!!
 
 子猫ちゃん時代にちくわなんてよく食べてたわりには、23才まで長生きしたなんてすごいよ、ファージ。
 17才から腎臓病で獣医さんの常連だったんだとしても、それでもすごいと思うのだ。
 そもそも17才までは獣医さん常連じゃなかったということ自体でも、ファージは素晴らしいと思うのだ。


2)本の増殖

 本ってとてもとても気をつけないと、すさまじい勢いで増えていくのよねえ・・・・。
 我が家はここまではすごくはないけれど(気をつけてるし)、本棚のあいていた空間が非常にスピーディーになくなっていくという恐怖には、とっても共感できますとも(笑)

 しかし、本棚のためとはいっても、家をつくるって大変なことなのねえ。
 結局はマンション住まいどまりで一戸建てとは無縁な人生となる私は、家を買うお金がどうとかの問題ではなく、書庫=家のためにここまで根性を発揮できた陽子さん=新井素子さんに、素直に感心するのであった・・・・・・・。


3)25年の変化

 陽子さんが徐々に病院行きに抵抗がなくなり、正彦くんが徐々に病院嫌いになる・・・・。
「新婚物語」時代には想像もしなかったこの変化!

 「新婚物語」時代は、血液検査での陽子さんの怖がりっぷりのくだりなんて、ギャグかよ???とか思ってたけれど(エッセイの類読んでて、あの徹底した血液検査嫌いは事実がしっかりもとになっていることがわかるのがすごいが)・・・・・・「素ちゃんの痛い話」のあのアテロームの治療の記述を読んでいると、血液検査が怖いなんて言ってられなくなってきて陽子さんが病院行きへの抵抗感をしだいになくしていったというのは、まあわかるなあ(苦笑)。あの治療をやったからには、血液検査怖いとかもう言ってられないでしょう。というか、あの治療、普通人から見てもかなり耐え難い大変さだと思うぞ。

 「銀婚式物語」ではあまりはっきりとは描かれなかったけれど、正彦くんが病院嫌いになっていったってのは、栄養指導をがっちりされて栄養制限されることにうんざりしていったという理由がやはり大きいのかな。エンディングにはちらりと、陽子さんが毎日カロリーブックと秤のお世話になりながら単位食作っている苦労には触れられてましたねえ。エッセイだと「近頃、気になりません?」(廣済堂出版)あたりがそれか。眩暈がしてきそうな栄養制限だなあと、エッセイ読みながら思ったもんだった。そのへんの面倒と苦労、「銀婚式物語」ではかなりばっさりと端折られていた。


4)料理音痴

 料理音痴だったダンナの痛々しい記述に涙。いやあ、あまりにも共感できちゃう。そんな女性読者が多かったりするんではなかろうか。
 我が家のダンナは、若い頃、私がグロッキー状態になった時、
「元気をつけるためにはしっかり栄養をとらなきゃ」
と言って、コンビニで肉などのお惣菜をどーんと買ってきたりしてたのよねえ。

 最近、私がずっと病気になっちゃって料理ができなくなってしまったもんで、ようやく覚えてくれた!
 おかゆ作り!!!!!
 そうよ、胃腸が弱っている時に必要なのは、肉じゃないわ。おかゆなのよ!!!

 全然「銀婚式物語」と関係なくてすみません。でも、この調子の悲哀は、新井素子の小説・エッセイのあちこちに結構流れてはいますよねえ(笑)


5)料理と掃除に関するある作家さんとの口論って(笑)

 299頁―300頁で言及されている、作家さんとの口論。
 この作家さんって、氷室冴子ですよね?(笑)
 
 もともと、その話が載ってたのは対談だったので、≪口論≫なんてほどじゃなかったけれど。でも、埃で人は死ぬという話は確かに出てきたはず。


6)端折られたぬいさんとの暮らしの記述

 ぬいぐるみ達のお引越しのくだりでようやく「銀婚式物語」に登場する、大勢のぬいさん。
 新井素子さんは、ぬいさん達についても、何冊も何冊も本を書いているから、今更ってのはあったのかなあ。
 実にファンタジーちっくな、ぬいさん達との生活ぶりについて「銀婚式物語」で端折ってしまうのは、非常にもったいなくも思えるのだけど。


7)東京電力

 ソーラーシステムに関する記述を見ると、陽子さんってば相変わらずお人よしだなあと思う。
 オール電化のために、その鍋の買い換え方はありえないっしょーーー?

 東京電力あくどいっつうか。陽子さんってば、もうちょっといろいろ確認してから買い物してくれよっつうか。
 折角結婚祝いでお友達にもらった土鍋も使えなくなっちゃったのね。それとも、既に土鍋は殉職なさってたとか?

 ブレーカーの件も。
 そんなに真剣に謝らないといけないようなことでしょうか?
 東京電力がブレーカーについての記載をあまりわかりやすいものにしてなかったことが、根本的な問題に見えるんだけど。

 今年の3月11日以降、世の中では東京電力への批判的論調がどかんと増えた。
 でも、お人よしの陽子さん(=新井素子さん)は、そうした突然の批判的論調増加に対しては反論がきっとあるに違いない!(^^)!


8)洋服選び

 25年たっても、洋服選びに関する陽子さんの基準って、ほとんどかわらないのね。
 シリーズとの出会いの頃、めぞん一刻Tシャツに関する、陽子さんと正彦くんのやりとりがあったけれど、陽子さんってば、25年たってもなおも・・・・。

 でも、私、正彦くんよりも陽子さんの方がわかるなあ(笑)
 食材のために何件もの店をまわるのは、苦痛じゃないどころか寧ろ楽しい。
 でも、洋服のために何件もまわるのは嫌。


9)ペリドット

 「結婚物語」。誰も知らないペリドットのエピソードが楽しかった。
 宝石に疎い私、誕生石はそれでもある程度は言えるけれど、ペリドットなんて聞いたこともなかったので、お勉強になったという意味でも楽しかった。どっかのお店で、
「これが『結婚物語』に出てきた、あのペリドットなんだぁぁぁ」
と、眺めて楽しんだりも。

 そのペリドットがよりにもよって、よりにもよって、よりにもよって、「銀婚式物語」において、こういうオチを迎えるとは。陽子さんってば素敵すぎるーーーーー(笑・笑・笑)

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コメント

もう、銀婚式なんですねえ。その実感の方が強いです。新井素子さんは二十代の頃から読んでいましたが、凄い才能ですよね。特にあの日常からのワープがすごいと思う。彼女にかかると全てがSFになってしまうでしょう。「素子の読書あらかると」という本には、コバエが増えて困るという話からなぜかナウシカの話にワープしてた。こういう感覚というのは常人ではないですよね。結婚物語も新婚物語もそうでしたが、些末な日常の話をこうもぶっとんだ話に出来る才能がすごいとしか言えないです。三部作の一連のエピソードで印象に残るのは、クーラー購入ドタバタ騒動とお父様の蔵書とファージ。
ちなみに私は素子さんと同世代ですが、子供がいなくて動物(こちらは犬でしたが)を飼い、本の増殖に悩み、夫婦で病気して病院通いしている友達夫婦、という感じが似ていると勝手に親近感を覚えつつも、やはり、こちらは凡人でよかったと妙な安心を覚えてますね。
三十年前、友人が素子さんと同じ大学で「自分の友達が新井素子の友達を知っている」と自慢(?!)してたのを思い出します。それくらいアイドルだったのか、とにかく有名人だったらしいです。
ペリドッドは、結構持っている知り合いがいましたよ。見た事もあります。手頃な値段で若草色の綺麗な石。私は宝石に関しては興味がないので判りませんが古畑任三郎で光る石の話が出てきたんですが、確かあれ、ペリドットじゃないかな。
それと旦那に料理は無理というのは同感です。うちは、メニュウが固定されます。以前、私が退院してきた時三日位、お豆腐とお粥とトマトサラダと焼鮭が続きました。栄養の事も考えてとは言え…。でも文句を言うとふて腐れて何もしなくなるので上手く操縦しておだてています。今はこちらが食品交換表と秤で料理を作ってますが。恐ろしい事にしゃもじで掬うと大体のグラムが判るし、食品の重さで大体栄養(カロリー、たんぱく質)が判っちゃう。慣れというのは怖いものですねえ。
それはさておき「もいちどあなたにあいたいな」では久々にSFに復帰して。ファンとしてはうれしいですよね。金婚式なんて迂遠な事を言わず、また、短編でもいいから大島夫妻の近況を知りたいものです。

投稿: まるさん | 2011年11月28日 (月) 20:07

こんにちは、まるさん。
コメントありがとうございます。
とても嬉しいです♪ お返事が遅れがちで申し訳ないです。

新井素子さんは、常人から見ているとぶっとんだ人ですけれど、常人の目を通すと自分自身の発想や生活がどういった形でうつるものなのかという視点も欠かさず持っているのが面白いなあとも思います。結婚物語シリーズで言うならば、たーさんの視点。「チグリスとユーフラテス」その他いろんな小説などで、不妊の女性の苦しさや、狂気にまで至ってしまうほどの悲しさを、とことんまでつきつめながらも、そういった視点をも客観視しているもう一人の素子さん視点。視点を入れ替えながら世界を見るってのも、もとちゃんワールドを形成していく上ではおそらく大事な作業ということなんでしょうね。

「金婚式物語」、ファンから見たら、迂遠に思えるんでしょうけれど、きっと新井素子さんの時間間隔だとそうでもないということなのでしょうね・・・。ご本人は、SF作家であるという認識でいらっしゃるだろうから、多分今後の長編執筆予定に本格SFも入れていて、それが完成するまでには数年単位という計算でいらっしゃるでしょうし、多作は出来ないと自覚していらっしゃるわけなので他のジャンルの小説を執筆するとしても本格SFを書いた後というスケジュールになるわけだからさらにその数年後という計算でいらっしゃるでしょうし、軽く十年以上先・・・・結婚・新婚・銀婚式物語三部作以外にも、書きたいジャンルはいろいろあるでしょうから、
「SFまたはホラー→その他小説(明るめ)→SFまたはホラー→その他小説(明るめ)」
という順番だとすると、四つ目は二十年後ってのは軽くありえるだろうなあ、と。

 恐ろしい話ですけれど、未完の山がつくられるよりはこちらの方がいいかしら。
「ふたりのかつみ」とか「第13あかねマンション」ものとか、「星へ行く船」の太一郎さんの話なんかは、もう諦めた方がいいんでしょうね・・・・・。

 御食事のメニュー固定化は、我が家よりは羨ましい状況ですよ。
 タンパク質を含んだ食品があって野菜がある!!!!
 我が家では、二品以上の食品を作って食卓に並べるというのは不可能っぽいです。
「野菜食べて!」
と何回繰り返したことやら。
「マカロニサラダを買って、それで野菜食べたと思わないでくれ」
ってのも繰り返したりしてます。もうこのところ完全に諦めて、野菜はコンビニで調達してくれと繰り返してます。調達してきてもらうにしても、金平ごぼうだとか切干大根だとか、ただただ野菜と言うだけではなく、メニュー指定からはじめなくてはいけない、という・・・・・・。

 銀婚式物語を読むタイミングが、大島弓子さんの猫物の漫画再読のタイミングと何故か重なったためもあり、猫を愛する作家さんの生活を意図せず読み比べることになりました。お二人とも、愛猫と共に暮らし始めた時は、猫の健康問題について全然わかっていないのに、愛ゆえにかわっていき、老いた猫との生活にまでいきつくんですね。その愛し方には、共通点、まったく違う点様々で読み比べると面白いです。大島弓子さんワールドだと、猫との生活は≪猫とわたし≫になりがちだけど、新井素子さんの場合は、他頭飼いは考慮の外ですし、猫を飼うことが近所で魚や鳥を飼って愛している人の心を脅かすことをも意識しているんですね。

ペリドットに関しては、私は「見たことあったっけ?」のレベルです。洋服や宝石への関心度では素子さんに負けない!(全然自慢にならない)

投稿: るんせる | 2011年12月 4日 (日) 03:43

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