書籍・雑誌

2011年12月30日 (金)

12月に読んだ本(物語以外)


大野更紗「困ってるひと」(ポプラ社)

 中島岳志さんが書いた朝日新聞の書評を読んで興味がわいたので図書館で借りてみた本。

 どういう経緯で本になったのだろう?
 ポプラ社というのは、私にとっては不思議な会社で、妙な児童書を出版している所という印象。中には良書もあるようなのだけど、きらびやかに可愛い変なインパクトの表紙がついていて顧客確保が中途半端になっている所っていう感じがするんだな。児童書以外の分野にも手を出しだしているけれど、水嶋ヒロの売り出し方とか、頭悪そうというかお金への固執が見えやすいというか。

 上智大学の学部時代、院生時代、ビルマの難民支援を自分の生きる道を考え始めていた著者を突然おそう難病。著者は自分自身が、援助されなければならない≪難民≫の状況に陥ってしまう。

 友人に頼ることの難しさをとても素直に語る著者。「できることがあったら、何でも言ってね」という100%の誠意に、とても素直に甘えて頼る著者は、とても素直にその好意に甘える。幸せだ・・・・・。そして、失敗するのだ・・・・・。お友達は正直に、甘えられることの負担感を語る。著者は、学部時代の卒業論文のテーマ「援助は誰のものか」がまさに現在の自分の状況と同じであることに愕然とする。援助は難しい。援助し続けることは一時的凌ぎとはなっても、援助される側の苦境の根本的原因を取り除くことは出来ない。最も周辺化され、最も援助を必要としている人びとにとっての最良の支援とはなに?

 著者は、自分が援助する側であった時を思い出そうとする。その時、難民である友人たちはどういう姿勢であったか?援助する側である著者に対して、過度に期待したり求めたりはしていなかった。ひるがえって、病人である自分は、助けてくれようとする友人たちに過度に甘え、頼り、そして友人たちは離れていった。100%自分を投げかけて誰かを頼ることは出来ない。友人も、先生も、両親も、それを重く思い離れていってしまう。そして残るのは孤独感。
 そんな時に突然、恋愛感情という変化、ずっと熱心に親身にたずさわってきてくれていた主治医の先生の心無い一言に出会い、著者は、ずっと入院していた病院を出て外で生活することを真剣に考え始める。 
 まだこれから第二章、第三章が待っている、若い女性の生きてきた第一章。
 当たり前の大変さが、コミカルに真面目に語られ続ける。

 序盤で、上智でインドネシアについて教えていた村井吉敬先生について軽く語られていた。なんとなく笑ってしまう。私、学生時代に、村井先生の授業・語りを聞きたくて上智まで足を運んで行ったことがあるのだけど、その当時と全くおかわりなさそうで。当時は、「バナナと日本人」「ナマコの眼」で有名な鶴見良行さんもご存命で、お二人の授業には、他大学の学生さんが結構潜り込んでいて、そういった学生さんを非常に熱心に受け入れる先生達であった・・・。やはり、上智でNGO活動に関心を抱いていたら、足を運ぶ先は村井先生の所なのね。若い頃はイケメンだったんだろうな、という大野更紗さんのコメントに頷く私。うん、私、村井先生をはじめて見た時、わーい、好みのタイプだなあとか思ったもんでしたわ(~_~;)


○福島みずほ対談集(論争社)

 対談相手は、鎌田慧 田中優、鎌仲ひとみ、浜矩子、内田樹、佐藤優、西山大吉、田中優子、田辺聖子、やなせたかし、湯浅誠。

 いろんな立ち位置の人、中には福島みずほとは全く異なるのではないかといった立ち位置の人がいるけれど、そうした人達の意見や思いを謙虚な姿勢でひきだしていく福島みずほの語りが面白い。世の中での彼女の嫌われ方は、フェミニズムの立場にいる人はこんな人といった安易な批判の遡上に彼女がのりやすいタイプに見えるからかなあ、と思うだけに、こうした彼女の見え方は面白い。まあ、フェミニズムに対する世の断じ方の方がそもそもは一方的でばかばかしい斬り方であることがしばしばだったりはするわけだけど。


○島崎今日子「<わたし>を生きる 女たちの肖像」(紀伊国屋書店)

 「アエラ」の『現代の肖像』の頁で書かれた、各界でエネルギッシュに動く女性への取材記事がまとめられた本。山田詠美、夏木マリ、萩尾望都、上野千鶴子のものを読みたかったので、借りてきた。
 山田詠美についての一文がうまい。こんなに短い文でここまで的確に彼女を語れるのがすごいな。

「硬質な文体はセックスを描いてもエロとは遠く、物語は感情と関係に収斂される。」

 萩尾望都の記事で著者が一番力を入れているのは多分、親との関係への絶望や萩尾望都が女性であることによってずっと味わい続けてきた閉塞感なのだろうけれど、私はその部分よりも、自己模倣を自身に対して禁じた萩尾望都の創作者としての決意に関する描写に惹かれる。
 上野千鶴子に関する文章では、彼女が人から「なぜあんな人を推薦するのか」と非難されても、頼まれれば推薦文や推薦状を書くことを断らない、自分自身が手に入れた権力を積極的に使って女たちに手を貸して人を育ててきた、ということへの上野千鶴子が持つ誇りや生き方の選択に言及しているあたりに惹かれる。


○図書館で借りて読んだ本
●購入して読んだ本
◎図書館で借りた後に購入手続きした本

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2011年12月29日 (木)

12月に読んだ本(物語)

 新刊の書籍をあまり読まない月だった・・・・・。
 スケジュール的に絶対受かりそうもない資格試験に向けたお勉強やら、既に読んだ本を読み返すやらをしていたら、こんなことになっていた。図書館への予約が詰まっていて、今月は読む本がまわってこなかったというのもあるかも。娘の学習参考書の購入が続いたりしたので、書籍代自体は結構出費がかさんでたりする。変な感じ。1月上旬までに図書館に返却しなければいけないのにまだ読んでいないという小説が何冊もあるので、来月はもうちょっと読むことになりそう。満足感につながるかは謎な小説の類を(-_-;)
 

○前田珠子「破妖の剣6 鬱金の暁闇10」(集英社)

 本編よりも、番外編の短編「アトラトの夢」の方が、ラエスリールと闇主の甘々じれじれを楽しむには良いかも(笑) ラスに対して好き勝手にしているようでいてどこか突っ切れずにいるままの闇主に対して笑いがとまらない。


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2011年11月 5日 (土)

10月に読んだ本(物語)

●荻原規子「レッドデータガール5 学園で一番長い日」(角川書店)
 感想はコチラ


●新井素子「銀婚式物語」(中央公論新社)
 感想はコチラ


○角田光代「八日目の蝉」(中公文庫)

 二代の女・母と娘の人生を描く。
 愛人の娘を誘拐した女。そして、幼い自分には誘拐の事実を全く知らず、女を母として素直に慕っていた少女のその後。
 哀しみ。じわりじわりと押し寄せるひたすらの哀しみ。
 けれど同時に、こどもを育てることの喜びと恍惚感をも合わせ描く物語。


○野村美月「夕顔 ヒカルが地球にいたころ・・・・・」(ファミ通文庫)

花の描写は美しい。でも、このシリーズ、‘文学少女’シリーズをこえる期待は2巻時点では持てないかな。もう少し巻数がたまってからの一気読みに切り替えた方がいいかもしれない。

超意地っぱり娘の式部帆夏は可愛い。‘文学少女’シリーズの琴吹ななせのファンを大いにひきつけるであろうツンデレ娘。

1巻のヒロインは葵、2巻のヒロインは夕顔ときて、3巻は若紫なんだとか。作者は若紫を、≪平安最強ロリっ子≫というものすごい形容。


○茅田砂胡「天使たちの課外活動」(中央公論新社)

 一応新シリーズ開幕の巻なんだそうな???
 いつもと一緒だけど(笑)

 意地っぱり娘のペギー・メイが信じがたいほどに可愛らしすぎるというのが収穫だった巻。


○小田菜摘「花嫁の選択 風の国の妃は春を忍ぶ」(コバルト文庫)

 あとがきでラブラブ描写を頑張ったと強調してたけれど・・・・・・。
 頑張るというのはこういうことなのか。

 読者というのは、結構、直接的描写を歓迎するものなのだということなのか?
 私みたいに、想いのすれ違い等の描写の積み重ねに登場人物同士の心の触れ合いの熱さを感じて胸ときめかす、みたいな読者は旧人読者なのか?

 キスシーンがいくら沢山あっても、手すらつながない『待つ宵草がほころぶと」の二人のかすかな接近ほどにはドキドキしないんだ・・・・・。


○辻村深月「水底フェスタ」(文藝春秋)

 辻村作品としてはやや異色?
 いつもの、延々と続く悪意描写はおさえられ、人々の日々の暮らしの中の閉塞感が物語の軸となっている。

○湊かなえ「往復書簡」(幻冬舎)

 悪意だけではなく善意もまた徹底して気持ち悪い印象をもたらすことがあったりするなあ、という感想を持たされてしまった物語だった・・・・。


○アイリス・ジョハンセン「砂漠の花に焦がれて」(二見書房)

 原題「Touch the Horizon」
 邦題よりも原題の方がいいような(笑)
 1984年刊行のロマンス小説。翻訳刊行は2011年。

 「あの虹を見た日から」で印象的だった女性脇役ビリー・キャラハンが今作のヒロイン。相手役はレイヴィッド・ブラッドフォード。
 出会っていきなりヒロインをウインドフラワー(アネモネ)と呼ぶヒーローの感性にはクラクラさせられたりもするが。ウインドダンサーは、昔翻訳されていたシリーズ物の要だったから、読み手にとって懐かしいっちゃあ懐かしいものではあるのかな。
 西と日本の、口説きにおける感覚の違い、文化の違いを楽しむのが、ロマンス小説なのよね、きっと・・・・。

「ふるえる砂漠の夜に」のヒロインだったジラの過酷な少女時代が、母ヤスミンの言葉によって、今作のヒーローのデイヴィッドの優しさを占めるエピソードとして語られる。


○アマンダ・クイック「香り舞う島に呼ばれて」(ヴィレッジブックス)

 原題「Desire」
 翻訳刊行は2011年だが、執筆は1993年。
 12世紀後半が舞台。
12世紀後半のイングランドを舞台とするヒストリカルロマンスが多いのって、アマリカ人女性にとって、この時代は、日本における幕末とか戦国時代に相当するような面白さを大いに感じるような時代だからなのかな?「アイヴァンホー」の時代であるってのはやはり大きいのかしら。 


○図書館で借りて読んだ本
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2011年11月 4日 (金)

10月に読んだ本(物語以外)

○雨宮所凛「14歳からの原発問題」(河出書房新社)

 3/11の原発事故を境に、原発の危険性を意識するようになった、運動家・雨宮所凛。
 初歩的なところからスタートしました、というノリと文体で(実際その通りだったのだろうし)、原発について学び、原発報道を語り、各所の有名な反原発活動人へのインタビューをしていく。インタビュー相手は、元・原発労働者、社会学者の開沼博さん、歴史社会学者の小熊英二さん、「はんげんぱつ新聞」編集長の西尾獏さん、獣医のなかのまきこさん、ドキュメンタリー映画監督の鎌仲ひとみさん等。
 2011年夏刊行の本。
 新しい情報はそれほどないけれど、若い人向けに書かれた本としての読みやすさというのがコンセプトになっているので、手にとりやすい一冊。「14歳の世渡り術」シリーズ のシリーズの一冊として刊行されている。

 タイトルを見た時、藤原心さんをかませたりするのかな、なんて予想したりしたけれど、そういうあざとい本の作り方にはなっていなかったことに少し安堵。


○白戸圭一「日本のためのアフリカ入門」(ちくま新書)

 2011年刊行の新書。
 2009年刊行のルポ資源大国アフリカ」(東洋経済新報社)ほどのインパクトではないかな?
 日本人のアフリカ観を歪めてきたメディアの在り方を問い直しなつつ、新しいアフリカ姿を紹介しようとするアフリカ入門書。アフリカの≪悲惨さ≫を強調するための人気テレビ番組の「やらせ」について等も、詳細に紹介。まずは≪求めているストーリーとしての感動≫があり、それにそったストーリーがあらかじめ準備されているのだという、やらせ報道アフリカ版の状況説明。

 日本のアフリカ外交の状況についても、読みやすくまとめられている。中国の急伸。日本は長年アフリカに巨額のODAを供与してきたがゆえに、重要事項が論議される際のアフリカ有力国からの支持に関して油断があり、中国によって切り崩されてしまった、その展開の説明など。


中野京子「怖い絵」(朝日出版社)
 中野京子「怖い絵」3(朝日出版社)


 中野京子の本を1冊読んだ時の感想はここに書いたけれど、暇つぶしに、それ以外の本にも手を出してみた。


○ニコラス・ロムスキー編「名曲悪口事典 ベートーヴェン以降の名曲悪評集」(音楽之友社)

原題「Lexicon of Musical Invective」

40人以上の作曲家と作品への批評のうち、酷評や悪評ばかりを集めた本。
事典の天才というよりは、ただの、評論家による主観的感想集.で、さほど新味もない。
初版は、1953年版だが、この翻訳は2000年刊行の新装版。

名曲受容における聴衆の衝撃や批評家達の怒り、驚き、失望、当惑についてってのは、ラヴェルの「ボレロ」やストラビンスキーの「春の祭典」のようにもとより知られたものはそれなりに語られるけれど、それ以外ってあまり語られない。そして結局この本の中の叙述については、ここで語られているのがその時代の批評の反映であるのか、ただの主観の寄せ集めであるのかが、わかりづらい本なのであった・・・・・・

○図書館で借りて読んだ本
●購入して読んだ本
◎図書館で借りた後に購入手続きした本

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2011年10月30日 (日)

荻原規子の新刊「レッドデータガール」第5巻購入

 楽しみにしていた荻原規子の最新作「RDG5 レッドデータガール 学園の一番長い日」(角川書店)を買ってきた。

 ツイッター情報だと、都内大手書店に陳列が始まったのは10/28(金)夕方だったそうな。我が家のダンナは、28日夜7時ちょっと前に、私の病室に見舞いにきてくれた時に、RDG5巻を持ってきてくれたので、その日のうちに無事に読み終わることができた!最後の方は、病室の消灯時刻が過ぎてからだったので、布団をかぶって携帯電話の灯りで細々と読むことになったけれど。

 この巻で展開されるのは、鳳城学園で開催される学園祭。
 10/2(土)と10/3(日)の二日間の、戦国学園祭。
 泉水子(いずみこ)たち生徒会執行部は、黒子の姿で裏方にまわる。しかし、大いに盛り上がる学園祭の水面下では、高柳たちが仕掛けた罠が動き出している。そして、高柳の勢力と競って学園トップをねらう、宗田真響(まゆら)と弟・真夏の姉弟は、高柳の狙いを阻止できるのか?
 ひっこみじあんヒロインの泉水子は、宗田姉弟に強いつながりと友情をおぼえている。人ならぬものを見分け、神霊と対峙し、姫神と呼ばれる謎の存在に憑依される少女である泉水子。地味に平凡に生きていたい泉水子は、様々な思惑の交錯する戦いの中で、それらを他人事として存在していることは出来ないような位置に立たされ巻き込まれてしまっている。

 荻原規子が上橋菜穂子との対談などで語っていたところの、≪変な学園物≫がますます力を発揮。本当に、実に変な、学園物(笑)。
 ファンタジー。少女小説。ライトノベル。カテゴリーのための語彙はいろいろあるだろうけれど、ここはやはり≪学園物≫が一番ふさわしいノリ。

 今回の巻は、最終巻の前巻ということもあり、物語が大きく派手に動き、「学園の一番長い日」が壮絶なまでに盛り上がる。戦う勢力も、怨霊も、神霊も、山伏も、大活躍。和水子と深行(みゆき)の関係は小前進?トトロにからめて、なにげにすごいことを泉水子に対して言ってませんか、深行くん?(笑)

 今回の巻、物語の終わり方がとても綺麗。絵になりそうだけど、下手にアニメ化なんてされたりしたら、つまんないものになりそうかなあ。でも、なんらかのメディアミックス戦略は動いていそうなことを、Amazonの書籍紹介頁を見ると感じるような。

 さてしかし、学園トップが、高柳でも真響でもないものにおさまったということは、歴史はどう動いているといえるんだろう。
 鳳城学園というものの存在に、今までの歴史とは違う流れが加味されていることや、紫子が今回の泉水子や深行の行動を評価しているらしいところを見ると、歴史になんらかの修正は加えられているということなのか?

 次回の最終巻楽しみ! 最終巻ですよね?上橋菜穂子氏が以前に対談で、
「6巻じゃ終わらないような気がする」
なんていうイヤーンな予想を言ってたけれど、そんなことありませんよね?


☆2巻読後感想はココ
☆3巻読後感想はここ
☆4巻読後感想はココ

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2011年10月23日 (日)

新井素子「銀婚式物語」購入と、銀婚式物語とは全然関係無い雑談

 中央公論新社から刊行された、新井素子の新刊購入。以前、角川文庫から出た「結婚物語」「新婚物語」の続き。
 都内大手書店に並び出したのは21日夕方だったらしいが、どうやら私、しっかり、その21日にすぐにゲットできてた模様。病気で入院してるというのに・・・・出たばかりの新刊を買ってきてくれたダンナに感謝感謝だ。

 このシリーズ、新婚物語まで出てた頃は、作者も含めて、妊娠、出産、子育てのバタバタ大騒動の物語も続けて出ていくんだろうなと、予測・期待されていたような気がする。作者自身があたりまえのように、何年かしたら出産といったようなことにだって楽しげに触れてたわけだし。新婚物語で購入したマンションには、そのうちこどもがうまれた時用のスペースだって準備されてたわけだし。
 でも結局、そうした物語は描かれることなく、陽子さんと正彦くんの物語は25年後にとんだ。

 私はそれなりに新井素子ファンではあるので、その間に出たほのぼのエッセイも、お笑いエッセイも、シリアス系ホラーも、SFも、単行本になった物は大体全部おっかけてきたとは思う。

 「結婚物語」の頃から作者は、この物語は、ノンフィクションをもとにしたフィクションなんだと主張している。適宜ノンフィクション部分を混ぜているのだと。
 確かに、「結婚物語」はフィクション部分の占める割合が高いだろうなあという印象を受ける。でも、「新婚物語」は、ノンフィクションが小説向けに書き換えられたのだろうなとおぼしき叙述が増えている印象だ。病院行騒動、引っ越し、猫ちゃんのファージの家族入りなど。

 そして「銀婚式物語」。
 「新婚物語」までの重要キャラ達が、年月が過ぎ去ったのと共に退場していっただけではなく、物語叙述が、陽子さんの頭で思うことが中心となり、正彦さんですら、陽子さんに比べるとその思いの部分がやや後ろに置かれる形で描かれている。
 だからこの本の印象は、物語というよりは、≪ノンフィクションをかなり参考にした、エッセイ的叙述≫といったものが強くなっているような。

 全13章にOPENINGとENDINGがつく。
 マンションから一軒家へのお引越しという大騒動があったため、物語の中でそれらの占める割合が最も高い。
 エッセイ本「明日も元気にいきましょう」(角川文庫)にあった、一階部分が書庫で二階部分が住居、お父さんから受け継いだ膨大なSF本をようやく自宅に引き取ってエクセルで管理、といった顛末が、詳しく詳しく、それはもう詳しく描かれる。エッセイでは短かったため、おうち作りの顛末の記述はものすごく面白い。
 幸せそうだ。いいなあ・・・・と思う、マンション住まいで本をなかなか増やせない私(笑)

 それから、猫絡みの騒動。
 アテロームによる騒動はぶっちゃけ「もとちゃんの痛い話」(角川文庫)の方が面白く読めるものになっているとは思う。

 アテロームによる通院話にくっつけて、短めにさらりと、不妊のお話。そして、25年という歳月の中で去っていってしまった人々のお話。
 新井素子さん、あとがきで
「ぜひ、二十五年後、『金婚式物語』でお目にかかりたいと思っています」なんて言ってるけれど、ホント?それホント?二十五年もたったら、普通、もっと増えるよ?
 まあどのみち、私は読めないんだけど(涙)

 といったあたり、総体的感想。
 ここで感想文終わらせちゃっていいんだけど、読みながらついついメモとってしまったので、その細かいメモも書き散らしてしまいます・・・・。


1)長生き!!!
 
 子猫ちゃん時代にちくわなんてよく食べてたわりには、23才まで長生きしたなんてすごいよ、ファージ。
 17才から腎臓病で獣医さんの常連だったんだとしても、それでもすごいと思うのだ。
 そもそも17才までは獣医さん常連じゃなかったということ自体でも、ファージは素晴らしいと思うのだ。


2)本の増殖

 本ってとてもとても気をつけないと、すさまじい勢いで増えていくのよねえ・・・・。
 我が家はここまではすごくはないけれど(気をつけてるし)、本棚のあいていた空間が非常にスピーディーになくなっていくという恐怖には、とっても共感できますとも(笑)

 しかし、本棚のためとはいっても、家をつくるって大変なことなのねえ。
 結局はマンション住まいどまりで一戸建てとは無縁な人生となる私は、家を買うお金がどうとかの問題ではなく、書庫=家のためにここまで根性を発揮できた陽子さん=新井素子さんに、素直に感心するのであった・・・・・・・。


3)25年の変化

 陽子さんが徐々に病院行きに抵抗がなくなり、正彦くんが徐々に病院嫌いになる・・・・。
「新婚物語」時代には想像もしなかったこの変化!

 「新婚物語」時代は、血液検査での陽子さんの怖がりっぷりのくだりなんて、ギャグかよ???とか思ってたけれど(エッセイの類読んでて、あの徹底した血液検査嫌いは事実がしっかりもとになっていることがわかるのがすごいが)・・・・・・「素ちゃんの痛い話」のあのアテロームの治療の記述を読んでいると、血液検査が怖いなんて言ってられなくなってきて陽子さんが病院行きへの抵抗感をしだいになくしていったというのは、まあわかるなあ(苦笑)。あの治療をやったからには、血液検査怖いとかもう言ってられないでしょう。というか、あの治療、普通人から見てもかなり耐え難い大変さだと思うぞ。

 「銀婚式物語」ではあまりはっきりとは描かれなかったけれど、正彦くんが病院嫌いになっていったってのは、栄養指導をがっちりされて栄養制限されることにうんざりしていったという理由がやはり大きいのかな。エンディングにはちらりと、陽子さんが毎日カロリーブックと秤のお世話になりながら単位食作っている苦労には触れられてましたねえ。エッセイだと「近頃、気になりません?」(廣済堂出版)あたりがそれか。眩暈がしてきそうな栄養制限だなあと、エッセイ読みながら思ったもんだった。そのへんの面倒と苦労、「銀婚式物語」ではかなりばっさりと端折られていた。


4)料理音痴

 料理音痴だったダンナの痛々しい記述に涙。いやあ、あまりにも共感できちゃう。そんな女性読者が多かったりするんではなかろうか。
 我が家のダンナは、若い頃、私がグロッキー状態になった時、
「元気をつけるためにはしっかり栄養をとらなきゃ」
と言って、コンビニで肉などのお惣菜をどーんと買ってきたりしてたのよねえ。

 最近、私がずっと病気になっちゃって料理ができなくなってしまったもんで、ようやく覚えてくれた!
 おかゆ作り!!!!!
 そうよ、胃腸が弱っている時に必要なのは、肉じゃないわ。おかゆなのよ!!!

 全然「銀婚式物語」と関係なくてすみません。でも、この調子の悲哀は、新井素子の小説・エッセイのあちこちに結構流れてはいますよねえ(笑)


5)料理と掃除に関するある作家さんとの口論って(笑)

 299頁―300頁で言及されている、作家さんとの口論。
 この作家さんって、氷室冴子ですよね?(笑)
 
 もともと、その話が載ってたのは対談だったので、≪口論≫なんてほどじゃなかったけれど。でも、埃で人は死ぬという話は確かに出てきたはず。


6)端折られたぬいさんとの暮らしの記述

 ぬいぐるみ達のお引越しのくだりでようやく「銀婚式物語」に登場する、大勢のぬいさん。
 新井素子さんは、ぬいさん達についても、何冊も何冊も本を書いているから、今更ってのはあったのかなあ。
 実にファンタジーちっくな、ぬいさん達との生活ぶりについて「銀婚式物語」で端折ってしまうのは、非常にもったいなくも思えるのだけど。


7)東京電力

 ソーラーシステムに関する記述を見ると、陽子さんってば相変わらずお人よしだなあと思う。
 オール電化のために、その鍋の買い換え方はありえないっしょーーー?

 東京電力あくどいっつうか。陽子さんってば、もうちょっといろいろ確認してから買い物してくれよっつうか。
 折角結婚祝いでお友達にもらった土鍋も使えなくなっちゃったのね。それとも、既に土鍋は殉職なさってたとか?

 ブレーカーの件も。
 そんなに真剣に謝らないといけないようなことでしょうか?
 東京電力がブレーカーについての記載をあまりわかりやすいものにしてなかったことが、根本的な問題に見えるんだけど。

 今年の3月11日以降、世の中では東京電力への批判的論調がどかんと増えた。
 でも、お人よしの陽子さん(=新井素子さん)は、そうした突然の批判的論調増加に対しては反論がきっとあるに違いない!(^^)!


8)洋服選び

 25年たっても、洋服選びに関する陽子さんの基準って、ほとんどかわらないのね。
 シリーズとの出会いの頃、めぞん一刻Tシャツに関する、陽子さんと正彦くんのやりとりがあったけれど、陽子さんってば、25年たってもなおも・・・・。

 でも、私、正彦くんよりも陽子さんの方がわかるなあ(笑)
 食材のために何件もの店をまわるのは、苦痛じゃないどころか寧ろ楽しい。
 でも、洋服のために何件もまわるのは嫌。


9)ペリドット

 「結婚物語」。誰も知らないペリドットのエピソードが楽しかった。
 宝石に疎い私、誕生石はそれでもある程度は言えるけれど、ペリドットなんて聞いたこともなかったので、お勉強になったという意味でも楽しかった。どっかのお店で、
「これが『結婚物語』に出てきた、あのペリドットなんだぁぁぁ」
と、眺めて楽しんだりも。

 そのペリドットがよりにもよって、よりにもよって、よりにもよって、「銀婚式物語」において、こういうオチを迎えるとは。陽子さんってば素敵すぎるーーーーー(笑・笑・笑)

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2011年9月30日 (金)

9月に読んだ本(物語)

●小野不由美「ゴーストハント6 海からくるもの」(メディアファクトリー)

 刊行予定は残すところ1冊のみとなってしまった・・・・・・・・。リライトを心待ちにしてわくわくする日々がもうすぐ終わっちゃうと思うとすごく寂しい。リライト版完結後に、続刊の刊行が発表されるとかの楽しみがあれば嬉しいんだけどなあ。「悪夢の棲む家」で新たに登場した謎を放置したままシリーズを放置してほしくないもの。

 綾子大活躍の巻。綾子がこの役割で大活躍するのって、今までのところ、この巻だけなのよね(涙) もう1回くらい、新シリーズで舞台を田舎に設定して、活躍させてくれって願うのは、そんなに贅沢な願いってわけじゃないですよね・・・・・・・(:_;)

 シリーズ序盤の頃に比べると、登場人物達がどんどん良い関係になってきているので、ナルの性格の悪さが際立つなあ(笑)


○有川浩「県庁おもてなし課」(角川書店)

 有川さんの、セクハラという語に対する語感や意識は、一般人と若干違うような気がする。女子職員をちゃんづけで呼ぶ状況に関しては、すさまじい違和感(^^ゞ

 まちづくりを軸にして二組のカップルの恋物語も織り交ぜた物語。
 有川さんらしい元気で前向きなパワーと、有川さんらしい一面性(^^ゞ 行政に関する視座というのは、何が正しくて何が間違っているかというのは、一つの切り口だけで語れてしまうものではないはずだけど、そこを一つの切り口で通してしまうところを、物語のリズム感の良さ、エンターテインメントとしての良さととるか否かで、読後感はかなりかわってきてしまうかもしれない。ここでひっかかってしまうと、読む際のリズムが崩れてしまうから、リズム感の良さという評価にはならなくなってしまう・・・。

 文庫化されたら多分買うとは思う。まちづくりの物語部分は私的にはいまひとつなんだけど、恋愛部分は、片方のカップルについては結構ツボにはまるものがあったので。


○辻村深月「光待つ場所へ」講談社

 三つのスピンオフの短編小説。
 一作目の「しあわせのこみち」は、「冷たい校舎の時は止まる」のスピンオフ。大学生になって絵を描き続けている清水あやめが主人公。

 二作目の「チハラトーコの物語」は「スロウハイツの神様」のスピンオフ。「スロウハイツの神様」では、どちらかといえば悪役の側にいた彼女が主人公。「スロウハイツの神様」のヒロインの赤羽環も出てくる。

 三作目の「樹氷の街」は「凍りのくじら」と「名前探しの放課後」のスピンオフ。
 学校の授業で歌ったことのある合唱曲「樹氷の街」がなんだか懐かしくなって、音源探し(*^_^*)

 辻村深月の小説を読んでいると、私ってばまだ、許せないタイプってのを沢山抱えているんだなあと愕然とさせられてしまう。同族嫌悪的な拒絶感でいらいらするのだ。こんな悪意を身近な人に対していつも感じながら何故この主人公はそこに踏みとどまり続けるのだろう、悪意を乗り越えて昇華しようという生きる意思をこの主人公は持たないのだろうか、といういらいら。
 清水あやめの抱く中途半端な優越感と劣等感には、いつも感じる辻村深月小説へのイライラをやはり感じさせられてしまった。けれど、チハラトーコの物語には爽快感があった。彼女は嫌な女として徹底していて、ぐずぐずと踏みとどまらずに突き抜けてしまっているところがあるので。その突き抜け方はある意味ファンタジーの色合いを醸し出しているのかもしれないけれど。全く正反対の位置にいて和解なんてありえなさそうにみえた赤羽環との関係に光が見えるのがなんだか嬉しい。和解・・・・・はないだろうけれど、我の強い二人の女が、悪意の中でとどまり続けず、自分の中の悪意を認識しつつ、それを相手に対して隠すこともせずに、強烈なエネルギーをぶつけあっていく。


橘香いくの「ブランテージと魔法の城 魔王子さまと時の扉」(集英社コバルト文庫)

 完結巻。なのに、最後の最後っていうところで、意識を奪い取られるヒロイン。活躍せんではないかーーーーーー(^^ゞ


○アイリス・ジョハンセン「あの虹を見た日から」(二見文庫)

 原題「Capture the Rainbow」
 1984年刊行の小説。セディカーン・シリーズの現代物。
 ヒロインはスタントウーマン。
 ヒーローは映画監督。

 女優ビリー・キャラハンと、彼女と行動を共にしているアラブ人男性ユセフ・イブラヒムは、なかなか味のある脇役だった。


○図書館で借りて読んだ本
●購入して読んだ本
◎図書館で借りた後に購入手続きした本

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2011年9月29日 (木)

9月に読んだ本(物語以外)

○肥田舜太郎・鎌仲ひとみ「内部被曝の脅威 原爆から劣化ウラン弾まで」(ちくま新書)

 2005年刊行の本。
 広島での被ばくの後、六十年にわたって内部被曝の研究を続けてきた医師・肥田舜太郎氏と、ジャーナリストの鎌仲ひとみ氏が、内部被曝のメカニズムをわかりやすく語る本。1・4章を鎌田氏、2・3章を肥田氏が執筆。2章は放射能被害の患者に対する治療体験談。患者と向き合う肥田氏の、原爆に対する静かな怒りが淡々と綴られる。3章は内部被爆について。


○広瀬隆「FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン」(朝日新聞出版)

 この著者の著書を読むといつも残念に感じるのは、文章にみなぎってしまっている煽情性。訴えたい内容に関して力が入るがゆえなのだろうけれど、その煽情性ゆえに失っている読者が多いだろうなあと、もったいない気分にかられたりする。

 第二部第六章の「活断層におびえる『原発列島』」の中で言及される、泊原発、東通原発、大間原発、六ヶ所再処理工場、女川原発、福島第二原発、東海第二原発、柏崎刈羽原発、志賀原発、島根原発、伊方発電所、玄海原発、川内原発に関する記述なんかは、こうやってそれぞれの危険性の種類の違いを羅列することによるインパクトが働いていて、一読の価値ありだったりするのだけど。


○広瀬隆「原子炉時限爆弾 大地震におびえる日本列島」(ダイヤモンド社)

 2010年8月刊。第二刷発行は2011年3月30日となってる。
 ということは、刊行当時はあまり注目されず、3月の震災と事故で一気に売れだしたということなのかな。

 時期という点で注目されたのかもしれないけれど、文章・構成といった点ではあまり読みやすい作りの本ではないように思える。文章の煽情性がどうにかならないものかしら・・・。刊行時期に注目するならば、「Days Japan」 2011年1月号の方が、短いけれど読みごたえのあるものになっていると思うなあ。


○山本一太「一年でクラシック通になる」(生活人新書)

 なんてものすごいミーハーなタイトル(^^ゞ
 と思ったりしたけれど、クラシック音楽の歴史をざっくりまとめた第一章は結構面白い。バロック音楽の前についても結構言及が長いのだ。先日、「三銃士」の舞台を見た時に終演後の三銃士役者さん達の小噺の中で≪この時代にはどんな音楽が?≫みたいな問いが発せられていたけれど、思いもかけずこの本の中に解答を見出だす(*^_^*)

 第二章のクラシック音楽紹介は、若干管弦楽曲に偏った選曲ともいえるかなあ?


○図書館で借りて読んだ本
●購入して読んだ本
◎図書館で借りた後に購入手続きした本

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2011年8月31日 (水)

8月に読んだ本(物語)

 我が家の娘は十二国記未読だったらしく、今年の夏休みに入ってから読み始めた。はしゃぐ娘につきあってなんとなく再読。娘は、
「楽俊いいね。燕王いいね。延麒もいいよね。陽子かっこいい!『月の影 影の海』の前半みたいな暗めの話が好み。『東の海神 西の滄海』もすごく良かった!」
とはしゃいでおります。5冊読み、残りも夏休み中に読んでしまう予定だったようだけど、果たせなかった模様。でも、今現在、未読で、先にわくわくする状態だなんて羨ましいなあ。


●有川浩「別冊図書館戦争II」(角川文庫)

 発売日が入院中に来てしまったけれど、娘が本屋に足を運んでくれたので、遅れることなく読むことが出来た♪

 別冊はI、IIと出てるけれど、笠原郁のドタバタドキドキ牛歩恋愛話よりも、IIの方が好みだ。第一章の「もしもタイムマシンがあったら」で語られる緒方副隊長の不器用な恋物語が一番好き。だから、文庫のおまけでついた短編「ウェイティング・ハピネス」で、その後が語られているのが嬉しい!!!!

 文庫6冊にそれぞれついてたおまけ短編では、この巻に収録された「ウェイティング・ハピネス」が一番好きだったなあ♪♪♪
 稲嶺、玄田、緒方といった素敵なおっさん達を前面に出しての幕切れ。
 緒方の想い人登場を告げた玄田の言への稲嶺の最初の一声がいいですねえ(笑)

 竹内加代子が折口マキの紹介を獲得する過程ってどんな流れだったのかしら。
 インタビュー時点では、会話の流れを見る限りでは多分まだ、竹内加代子は、折口と図書隊の関係は把握していないように思われる。
 となると、インタビュー掲載の雑誌が出版された後、そのインタビューを読んだ竹内が、折口の過去の仕事にも関心を抱き、バックナンバーを何冊かめくっていたら関東図書隊について折口が書いた記事にばーんと出会った、なのかな。で、折口が緒方とどうやら直接面識があるらしいと気付いた竹内が、折口に連絡をとって「実はインタビューでお話したあの人は図書隊の・・・・」といった打ち明け話に踏み込み、折口が前のめりになるような勢いで協力やらアドバイスやらを申し出た、といった裏展開があるのかなあ(笑)自分が知っている者同士、好感を感じている者同士が実は、という流れは折口にとってはとてもうれしかっただろうし、自分自身と玄田との関係にも改めて重ねたりするものもあっただろうし。

 IIの主力内容である、柴崎&手塚の恋の成就の話も好きだ。なかなか素直になれない不器用なこの二人が可愛くて可愛くて。


◎ル・グウィン「ギフト 西のはての年代記I」(河出書房新社)

 2004年に刊行された、ル・グウィンのファンタジー小説。
 ヤングアダルト向けファンタジー・シリーズ「西のはての年代記」(The Chronicles of the Western Shore」の一作目。

 ≪西のはて≫の高地は、代々、ギフトと呼ばれる力を受け継ぐ領主たちが治めていた。カスプロ家の跡継ぎである少年オレックは、強すぎる力を持った恐るべき者として父カノックに目を封印される。

 ル・グウィンの小説って一時期、なんだか私にとっては異空間にいってしまったような感があり、近寄りがたいものがあったのだけど(ゲド戦記は1巻と2巻しか所有してないという嗜好の私(^^ゞ)、久々に手にしてみたこの小説は、初期に読んだル・グウィンの小説によく感じた、緻密でありながらもダイナミズムのある物語だった。


 あとがきで、2000年にハイニッシュ・ユニヴァースのシリーズの長編が刊行されてたということをはじめて知った。私がはじめて読んだル・グウィンの小説は多分、サンリオ文庫から出てた「辺境の惑星」か「ロカノンの世界」のどちらかだったような気がする。だから、なんだか懐かしくて嬉しい。翻訳が出てるのかどうか知らないけれど。


◎ル・グウィン「ヴォイス 西のはての年代記II」(河出書房新社)

 ≪西のはて≫の都市アンサルでは、侵略国オルドの圧政により、長い間、本を所有することが禁じられていた。少女メマーは、館に本が隠されていることを知り、当主である道の長から、ひそかに教育を受けるようになる。
 2006年刊行のル・グウィンのファンタジー小説。「西のはての年代記」二作目。

 一作目が少年主人公で二作目が少女主人公って、某○○戦記のようだわ(笑)


 シリーズ三冊目は今月中には読み終われなかったので、感想は来月に。


○辻村深月「V.T.R.」(講談社)

 「スロウハイツの神様」に登場する人気作家チヨダ・コーキのデビュー作。
 怠惰な生活を送るティーのもとに、三年前に別れた恋人、極上の美女アールからかかってきた一本の電話。「アタシの酷い噂話や嘘をたくさん聞くことになると思う。ティーにだけは知っておいて欲しいと思って。アタシは変わっていない」街に出たティーが友人たちから聞くアールの姿は、まるで別人のように痛々しく、荒んだものだった。

 チヨダ・コーキのデビュー作ってこんなふうなんだぁぁ。
 ちょっとイメージが違ったかもしれない(笑)
 ヒロインのアールは「スロウハイツの神様」の環とイメージが重なる部分も。デビュー作を書いた時点のチヨダ・コーキはまだ環とは全く出会ってはいないわけなのだから、アールってのはチヨダ・コーキの理想のタイプ、好みのタイプってことなのかしらね。環はきっと、アールに感情移入しやすかったに違いない。
 作品そのものよりも、「スロウハイツの神様」の登場人物達を思い浮かべながら楽しんだ。


○辻村深月「ふちなしのかがみ」(角川書店)

 ホラー系の中編五つ。
 最初に収録されている「踊り場の花子」が一番ホラーっぽいかな。部屋を真っ暗にして、頭の中で映像と音声を想像しながら読むと楽しいかも。
 「ブランコをこぐ足」は、アニメ「アルプスの少女ハイジ」の主題歌が不気味な使われ方をしている。この著者ならではの、クラスで上の方、下の方といった言い回しがあいかわらず・・・・・・・・。
 「おとうさん、したいがあるよ」は、最初はヒッチコックの「ハリーの災難」風かなあと思いながら読んでたんだけど、もっとずっと悪趣味だった(^^ゞ
 「ふちなしのかがみ」は深夜の鏡に願いをかける物語。アニメ「ムーミン」に、鏡を使った怖い話があったなあと思いだす・・・・・・・・。
 「八月の天変地異」は、友達がいないと同級生達に蔑まれている小学生の少年シンジとキョウスケが夏休みに経験した、素敵な友達をめぐる天変地異の物語。これはホラーではなく、後味が悪くないファンタジー系青春小説といったようなノリ。

○谷瑞恵「伯爵と妖精 情熱の花は秘せない」(集英社コバルト文庫)

 長いシリーズもそろそろ佳境?
 リディアとエドガーって、結婚したばかりの頃の記述を読んでいた時期には
「この二人ってもしかして、某シリーズのナリスとリンダみたいな結婚?」
と疑ったりしたものだったけれど・・・・・・・今回の巻を読んでいると、ちゃんと結婚してるんだなあ、と(笑)

○前田珠子「破妖の剣(6) 鬱金の暁闇 9」(集英社コバルト文庫)

 だらだら。

 まあとりあえず、ヒロインがちゃんとラエスリールに戻っていることには安心。


○図書館で借りて読んだ本
●購入して読んだ本
◎図書館で借りた後に購入手続きした本

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2011年8月30日 (火)

8月に読んだ本(物語以外)

○塚田幸光「シネマとジェンダー アメリカ映画の性と戦争」(臨川書店)

 総括的なタイトルではあるけれど、内容は、研究書・雑誌などに載っていた著者のアメリカ映画のいくつかの作品に対する批評を集めた物。
 頁数の関係で割愛されたという、戦争映画に対するいくつかの分析、ヘイズ・コード以前にグレタ・ガルボやディードリッヒが見せてきたもの、ホラー映画に関してなども、一緒にまとめてあれば、このテーマを語る物としてはさらに面白かっただろうと思われる。 
 この本において語られる映画で私が見ていたものはヒッチコックの「レベッカ」のみだったので、その批評を中心に読んだのだけど。
 フェミニズム批評が果たしてきた業績を踏まえつつ、「レベッカ」という映画の語り口、視座、視点、視野を、物語を細かく細かく追いながら分析していく。セルズニックが映画制作において要求したものをヒッチコックが逸脱させていく過程、そこから立ち現われる多面性と違和感。
 

○萩尾望都「一瞬と永遠と」(幻戯書房)

 80年代後半ー2000年代前半にあちこち(季刊へるめす、ユリイカ、漫画文庫解説文、キネマ旬報その他)に掲載されたエッセイをまとめたもの。
 漫画文庫解説がかなり集められているので、手塚、大島弓子、和田慎二、坂田靖子、超人ロック、サイボーグ009などへの熱い語りを読みつつ、萩尾漫画の思考のルーツをたどることができる。
 映画・舞台についてのエッセイも沢山。
 表題のエッセイは、スタジオライフで「トーマの心臓」「訪問者」の公演があった時の宣伝用印刷物だったとのことだから、非売品???
 私はスタジオライフの舞台は三原順原作の「SONS」でしか知らないのだけど、演出・脚本の倉田淳という人が、単に台詞が原作に忠実といっただけにとどまらずに原作漫画に展開されていた世界観をも生真面目に真摯にうつしとろうとしている作風にうなったものだった。原作者とスタジオライフとの出会いという意味では、萩尾望都に関する出会いが一番強烈な出会いだったんだろうけれど・・・・・・なかなかすごい出会いだったんだなあ、とあらためて。


○広瀬隆・たんぽぽ舎「こういうこと。終わらない福島原発事故」(金曜日)

 広瀬隆氏の講演録。2011年6月刊。


○図書館で借りて読んだ本
●購入して読んだ本
◎図書館で借りた後に購入手続きした本

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